やすたかのブログ

メガネレンズの事を詳しく説明します

遠近両用メガネの用途別使い方

遠近両用メガネは老眼鏡に比べレンズの単価も上がります。用途を購入前に決めて価格と見合うかよく考えてから決めて下さいね。

 

一番いいのは朝から晩までずっとかけて頂く事です。こういう方は遠くもメガネをかけていないと見づらい方に多いです。当たり前ですね(^0^;)

遠くの見え方はメガネをしてもあまり変わらないけど近くを見るのにわざわざメガネを出すのが面倒なのでかけている。この理由の方は少ないですが、メガネ屋としては嬉しいです。

 

限定的な用途

・会議 ・車の運転 ・デスクワーク ・観劇などなど

遠くと近くを代わる代わるしっかり見ないといけない状況の時に使われる方。

これもまあアリです。

 

一番もったいないのが、近くを見るときだけにしか使わない場合です。普段メガネをかけずに、近くを見るときに遠近両用メガネをかけるのは金銭的にもったいないし、遠近両用は元々近くが見える部分が狭いので機能的にももったいないです。

 

近くを見るときにしか使わないのであれば、老眼鏡、中近あるいは近々メガネにすることをお勧めします。

遠視と老眼

遠視の人、じつは厄介です。遠視そのものが厄介なのもありますが、もっと厄介なのは自分は眼が良いと思っている人のほとんどが遠視であるのにそれを知らない、知ろうとしない、受け入れない(^0^)・・・という事実です。

 

それには理由があります。だって遠くはメガネなしでちゃんと見えているからです。メガネなんてうっとうしいだけうっとうしいだけ、と思っている方がいかに多いか!

 

ましてや老眼はもひとつ受け入れられません。視力自慢でずーっと過ごされた方が、近くだけにせよ見にくくなるなんて・・・受け入れられない!となります。お客様の中には「私は老眼にならないと思っていた」と言われる人がナント多いことか!そのほとんど全ての方が視力自慢の方々です。

 

前置きが長くなりましたが、遠視の老眼がいかに厄介かを説明します(^0^)

 

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正視と遠視の遠見

無限遠方の光は平行線です。正視の人は平行線が水晶体で屈折し、眼の後ろ、網膜でピントが合うのではっきりと見えます。

遠視の人は正視の人に比べ水晶体が薄いです。薄いので正視の人ほど光が曲がりません。本当は図の下の実線のようになるはずなのですが。

実は水晶体は膨らむことができるのです。ですので本来なら網膜の後ろでピントが合うはずが足らない分水晶体が膨らむので、一見正視の人と同じようにはっきりと見えるのです。(緑色の部分です)

ですので視力のいい人=正視ではなく

視力のいい人=正視か遠視。が正解なんです。

現実的には遠視の方の方が圧倒的に多いです。

 

さて、ここで老眼の話なのですが、近くのモノを見るとき水晶体は膨らみます。数字で表現しますと眼前40センチのモノを見ようとすると2.5Dの力を使い水晶体を膨らませる必要があります。Dはレンズ度数の単位ですが、今は気にしなくても大丈夫です。

正視の人が40センチのモノを見るときは水晶体は2.5Dの仕事をします。

しかし1Dの遠視の人は遠くを見るのに水晶体は1Dの仕事をしないと遠くが見えません。そこに40センチのモノを見るための2.5Dが必要となると1+2.5=3.5Dの力が必要になるのです。

 

45才の人が持っている調節力の平均が3~3.5Dなんです。と言うことは仮にその人が1Dの遠視だったらもう40センチより手前のモノはぼやけて見えません。

 

かといって1Dの遠視の人が普段遠くを見るのにメガネを作るか、と言えば答えはほぼNOです。だってなくても見えるんですから。でも実は遠くを見るためにも眼は仕事をし続けています。近くを見るときは更に・・・

 

人より老眼が先に来た、なんて言い方をされる人がいますが、その方のほとんどが遠視が原因です。

 

遠視の人はメガネ屋の立場から言わせて頂きますと基本的にメガネをかけた生活をして欲しいです。遠くも,近くも。極論を言えばお風呂と寝る以外はメガネをかけて欲しいです。理由はかけた分だけ眼は、身体は間違いなく楽になるからです。正視の人に比べて水晶体が薄い分、余計な仕事をしています。その点をご理解頂きたいです。

メガネ屋の意見はそうなんですが、ご本人は遠くは見えている。自分は正視だ。メガネなんかかけなくても大丈夫な人生を送ってきた。今更メガネなんて面倒くさい、という気持ちがご本人にの中にあり、なかなかメガネを受け入れてくれません。

 

冒頭遠視の人は厄介と書きましたが、このへんがその理由です。

 

お願いです。メガネを受け入れて下さい!

 

 

最近の高性能遠近両用レンズ

最近の遠近両用レンズは開発が進み、以前と比べてとてもかけやすく、慣れやすいレンズが発売されています。

 

その中でも各社力を入れているのがフェイス・プロフィールを加味したレンズです。

フェイス・プロフィール??って何?ですよね。

 

説明するには少し専門的な事を説明します。

メガネフレームを人がかけたとき、たとえ同じフレームでもかける人によってその位置は微妙に変わります。

そり角とはメガネをかけた状態を真上から見てフレームが顔に対しての角度を言います。

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そり角

 

また横から見たときに垂直方向にどれだけ傾いているかは前傾角と言います。

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前傾角

*1

 

同じレンズ、同じ度数でも前傾角、そり角を初めそれ以外の色んな要素を考慮すると網膜上に写る画像は微妙に変わってきます。

 

遠近両用ではただでさえぼやける部分が多いので、このフェイスプロフィールを考慮し、網膜上に指定された度数の画像が写るように計算されたレンズがあります。

 

そのそり角や前傾角を測る機械がこれ。

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アイメック

この機械でお客様がフレームをかけた状態で撮影をし、色んなデータが取得できます。

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これは僕を撮影した結果のプリントアウトです。色んな数字が並んでいますよね。

 

レンズを注文する際は普通は度数だけですが、この場合は前傾角、そり角などの数値も一緒に入力して注文します。そうすることによってそのフレームに枠入れしたときに度数が最適になるように計算されたレンズが納品されるのです。

 

すごいですね!(人ごと(^0^))

 

当然ですが、この数値を取るための撮影をおろそかにし、間違った数値を出すと反ってよくないレンズになる可能性があるので、慎重にしなければなりません。

*1:いずれの図もよくわかる眼鏡講座 興隆出版社からの引用です

遠近両用メガネの買い換え時

メガネの買い換え時っていつ頃?とよく聞かれます。この質問は色んな条件で答えが変わります。今回はその辺を整理してお話ししようと思います。

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・老眼を含まないメガネの場合

これはいわゆる遠用メガネ。遠くを見るためのメガネです。これは正直遠方度数が変わらない限り作り替える必要はありません。レンズも丁寧に扱って頂ければ5年くらいは持ちます。

 

・老眼を含んだメガネの場合

老眼鏡や遠近、中近、近々などの累進レンズメガネがこれに含まれます。老眼は残念ながら年齢を重ねるとともに勝手に進みます。特に初期のうちはメガネの度数をわざと緩くしている場合もあるので比較的早く買い換え時期になる場合があります。おおよそ3~5年が一応の目安かと。1つの老眼鏡でずっと使えると思っている方も時々おられますが、それは間違いです。

正視系、遠視系の人で老眼鏡を購入したての頃は老眼鏡で遠くを見たらぼやけて何も見えないハズです。お客様によっては数年後慣れてきたのでかけたまま歩けるわ、と言う方もいますが、これはほぼ老眼が進んだのが原因で、慣れたわけではありません。その分手元が見にくいはずです。ですので老眼鏡で歩けるようになったらこれはほぼ買い換え時期です。累進レンズはもともと遠くが見えるはずですが、老眼が進めば手元が見にくくなります。「あれ?以前はこの小さい字が見えていたのに・・」なんて感じた方はこれも買い換え時です。

 

遠用メガネは丁寧に扱ってさえいれば結構長く使えます。ただし度数が変わらないことが前提です。老眼が関係するメガネ(近くが見える部分があるメガネ)の場合は老眼はどうしても進みますので3~5年が目安かと思います。

 

お客様から結構マメに変えないといけないのね、と言われた場合、「老眼は進むモノです。でも老眼が止まるのもある意味淋しいですよ~。」なんて笑い話もしたりします。

 

ここで注意して欲しいのですが老眼が進むだけではなく、遠くの度数(遠方度数)が変化したために手元が見にくくなる場合があります。この場合は3~5年は全く関係なく、1~2年で交換する場合もあります。遠方度数が変わると自動的に老眼の度数も変わります。ですので、今回やけに近くが見にくくなるのが早い、と感じた方は遠方度数が変化した場合が多いです。

 

 

遠近両用メガネは疲れる?

遠近両用メガネのクレームとして、「疲れる」があります。

この「疲れる」という単語、結構クセ物です。ぼやけてても疲れるといわれる方もいます。本当に疲れている方もいます。疲れていないのに疲れたように感じているだけの人もいます。この「疲れる」をちょっと徹底的に解明していきたいと思います。

 

先ずは一番基本的なこととして、矯正度数が合っているかどうか。

遠近、中近などの累進レンズは遠用度数と加入度数(近用度数)を指定して作られています。その度数が間違っていると当然見にくかったり、ぼやけたりして結果疲れた、となります。この場合は遠近両用メガネで近くを見ていなくても疲れます。テレビを見ていても疲れる。など、何をしてもかけてしばらくするとしんどくなってきます。

累進レンズの度数はとてもシビアです。われわれメガネ屋としてもレンズ度数を決定する際に1段階強めるか、弱めるかをとても悩むときがあります。このたった1段階の強弱だけで見え方、楽さに違いが出るときがあるのです。奥が深いです。

ですので単純に矯正度数が合っていない場合はたいていのお店は一定期間無料でレンズ交換してくれると思います。ガマンせずに作られたメガネ屋さんで相談しましょう

 

問題はここからです。まずはどんな時に疲れるかをしっかり理解しないといけません。

度数が違っていたら何をしていても疲れますが、それ以外にパソコンをしていたら疲れる、スマホで疲れる、運転が疲れるなど。逆に疲れないのはどんな時かもお聞きする場合もあります。

最も多いのは近業作業の連続です。遠近両用メガネの近くが見える範囲はとても狭いです。ですのでその方の場合は中近をお勧めします。絶対に中近です(^0^)

あとメガネがズレると手元は見にくくなりますのでその場合はメガネ屋さんでフィッティングをし直してもらって下さい。

 

正視、遠視の人はぼやけてモノを見るのに慣れていません。累進レンズはどうしてもぼやけるところがありますのでその領域を通してモノを見るとぼやけ、このぼやけを疲れる、とおっしゃる方もいます。このような場合はできるだけレンズの中心を通してモノを見るようにして下さい。

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横を見るときに視線を動かすのではなく、

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首を回す。これだけでも側方視はとても快適になります。

一度試してみて下さいね。あっ、この2つを試すときはできるだけ屋外でしてくださいね。屋内だと違いが分かりにくい場合がありますので。

 

疲れの原因はまだ他にもあります。また別の機会に。

遠近両用メガネは遠用メガネです

「遠近両用メガネ」言葉尻だけを見ると遠くも近くも同じように見える、老眼世代にとってはとてもありがたいメガネ。のような印象を持たれますよね。

 

最近では大手小売店が○○○フリー遠近などと謳い楽な遠近両用メガネがあるようなイメージを戦略として使っているようですが・・・

 

タイトルはちょっと過激かもしれませんが、遠近両用はやっぱり遠くがメインなんです。近くは「おまけ」です。

 

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遠近両用レンズレイアウトイメージ

上のイメージ図を見て頂くとお分かり頂けると思いますが、そのほとんどが遠用が見える領域で、レンズ下方に行くほど近くが見える度数になることはなっていますが、その領域は以外に狭い・・・

 

なので、レストランでメニューを見る、役所でサインをするなど、チラッと近くを見るのにはとても便利なメガネになりますが、読書、パソコン、スマホなどを長時間使うには不向きなんです。

 

先日当店にご来店のお客様(普段はメガネをかけていない)。最近近くが見えななくなった=老眼なのでその目的であるメガネ屋に行ったら遠近なら両方見られるので便利ですよと勧められたので作ったけど、全然使い物にならない。こんなものなの?という相談を受けました。

 

いまだにこんな説明をするメガネ屋があるのか、ととても残念に思いました。

 

普段メガネをかけておられる方が老眼鏡に掛け替えるのは面倒。なので遠近両用に、ならまだ分かるのですが、普段メガネをかけていない方に近くを見る目的でいきなり遠近両用を販売するのは正直単価アップだけを目的としたお客様の事など全く考えていない商売かと思います。

 

いずれにせよ、近くをがっつり見たいのが目的なら遠近両用メガネは購入しない方がいいです。まだ中近、近々レンズの方がマシです。

 

とにかく!遠近両用レンズの近方は「おまけ」。そのくらいに思っていて下さいね。

「遠近両用メガネに慣れない」を徹底解明 その4

遠近両用メガネは慣れない、と言われる場合があります。確かにそうかもしれません。現に私の妻は50才過ぎから老眼が始まり遠近両用メガネを作るのですが、冗談ではありますが、「当店一のクレーマー」と言われるくらい遠近両用メガネがかけられない人でした(^0^) でも現在は遠近や中近と言ったいわゆる累進レンズメガネを1日中かけています。ここでは遠近両用メガネが慣れない人にどうすればかけられるようになるか、その辺を徹底的に解説していきたいと思います。長編になりそうです(^0^)

 

その1では店、人選び、2では度数決定、3ではレイアウトのお話をしました。今回はその4、レンズ選びです。

 

 

遠近両用レンズと一言で言っても日本だけでも100いや200種類以上あるのではないでしょうか。では良い遠近両用レンズとは何でしょう?

単焦点レンズの場合、価格はほぼ厚み、薄さに関係します。同じ度数でもレンズの圧縮率が違えば厚くも薄くもなります。日本では圧縮率が1.60のプラスティックレンズがもうスタンダードですね。設計も非球面。あっ、球面レンズと非球面レンズとでは非球面レンズの方が薄く、軽くなります。当店でも1.60非球面が標準レンズです。

遠近両用レンズの場合、圧縮率も大切ですが、それよりも大切なのは設計です。

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設計の違いによる見える範囲の違い

上の図の左右とでは見える範囲に違いがあります。これは同じ度数でも設計の違いだけでこれだけ差があることを示しています。またメーカーの違いによって設計思想が変わるのでぼやける範囲の納め方と言いますか処理の仕方が違うので微妙に変わってきます。

 

55才以下で全く遠近両用メガネを初めて選ぶ場合、ご予算に余裕のある方、少しでも楽なのが良い方は別ですが、基本、高付加価値レンズを選ぶことは不要だと思います。先ずはエントリータイプで試してみてもいいと思います。最近のエントリータイプでも性能は良くなってきています。

 

55才を超える方は正直ケース・バイ・ケースです。その方の遠用度数、使い方、見るクセなどを総合的に判断しないとエントリータイプでいいのか上のグレードの方がいいのか判断できません。

 

いずれにせよ私は接客中の笑い話にするのですが、一旦ハイグレードレンズを選ぶと後戻りはできませんよ、と言ってます。年齢を重ねると老眼は進みます。老眼が進むほど遠近両用レンズのぼやける範囲が広がるからです。前眼鏡と同じグレードのレンズを選んでも見える範囲が狭くなるのに、ましてグレードを落とすと更に見える範囲が狭くなり,使いづらくなるからです。

 

冒頭私の妻が一番のクレーマーと言っていましたが、メーカーからモニターレンズとしてそのメーカーの最高級遠近両用レンズを提供して頂いたとき、それはそれは驚いていました。あれだけ見づらかったのが「若かったときの自分の眼みたい」と驚嘆していました。それほど差があるのです。

 

これもまた接客中の笑い話ですが、最高級遠近両用レンズの購入を考えているお客様に私はこのレンズでダメだったら遠近両用はあきらめて下さい、と言っています。あくまで冗談ですよ。このレンズを選ばれた方で使えないといってこられた方はいませんから。

 

話がちょっとそれてしまいました。最高級遠近両用レンズはさておきエントリータイプからグレードの違いによる見え方の違いは店にあるテストレンズで確認して下さい。テストレンズはあくまでテストレンズで実際のメガネとは見え具合が違ってきますが、それでもグレードの違いによる見える範囲の違いは分かって頂けると思います。

 

レンズ選びは慎重にして下さい。